写真=店主の青山さん。樂之軒で17年にわたり料理を供してきた
写真=安部さんの作品「りんご3」
蔵の中で心尽くしの会席料理を供し、約17年にわたり親しまれてきた上越市中央4の「樂之軒」が幕を閉じる。店主の青山栄子さんは「大勢の皆様にお越しいただき、1回1回の席を本当に楽しく開くことができました」と感謝の気持ちを込め、最後の蔵公開を11日から18日まで行う。
1913年建立の座敷蔵を生かし、98年4月に開店した。三・八の朝市をはじめ、桑取、中ノ俣、三和区などで収穫された野菜や四季の幸を主役に、出汁を引くところから手間をかけて仕上げ、提供してきた。季節行事にちなみ企画してきたひな祭り会席、月待ちの会席、女子衆の古正月などが評判となり、青山さんによると「99・9%が女性客。何度も繰り返し足を運んでくれる方もいらっしゃいました」。
ここ数年で一般的になった「地産地消」に開店当初から先進的に着目し、実践してきた。「何が一番のごちそうなのか考えた時、地元でとれた食材をその場所で食べられることだと思い至りました。農家の方と交流する中で、自分の作る姿勢も変わりましたね。苦労を聞くとお米一粒も愛おしく、大事に扱うようになりました」と振り返る。
調理場などの老朽化が著しく、早期の改築が迫られる中、やむを得ず閉店を決めた。惜しむ声が数多く寄せられたのを受け、青山さんは国府1の自宅で完全予約制の食事処を開く見通しで「これまでとは別の形になりますが、桜の咲く頃に再開できたら」と今後、準備を進めていく。
最後の蔵公開を兼ね、「安部直人同版画展」が11日から18日まで蔵内で開かれる。入場無料。
福島県会津塩川町出身、郡山市在住の安倍さんが9回目の個展に臨む。展示作の一つ「りんご3」は、みずみずしい果実や枝葉を精緻な筆致で表現。その芳香が夜闇に立ち上るようで、森閑とした空気に満ちる。
午後1時から同6時まで。電543・7384。